宮城県名取市閖上に蔵を構える有限会社佐々木酒造店は、代表銘柄「宝船浪の音」を手がける酒蔵です。
1871年(明治4年)の創業以来、港町・閖上の地で酒造りを続けてきましたが、2011年の東日本大震災では津波によって酒蔵が大きな被害を受けました。その後は仮設蔵で醸造を再開し、2019年には再び閖上へ戻って酒造りを続けています。
名取の米や水を生かしながら、地域の食や暮らしに寄り添う地酒を大切にしていることも佐々木酒造店の特徴です。
この記事では、佐々木酒造店の基本情報や閖上で受け継がれてきた歴史、土地と結びついた酒造り、代表銘柄「宝船浪の音」の主な日本酒、酒蔵見学や購入方法について紹介します。
佐々木酒造店の基本情報
有限会社佐々木酒造店は、宮城県名取市閖上にある日本酒の酒蔵です。
1871年(明治4年)に創業し、代表銘柄「宝船浪の音」を中心に酒造りを続けています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 酒蔵名 | 有限会社 佐々木酒造店 |
| 読み方 | ささきしゅぞうてん |
| 所在地 | 宮城県名取市閖上中央一丁目12番地の3 |
| 創業 | 1871年(明治4年) |
| 創業者 | 初代・佐々木新助 |
| 代表銘柄 | 宝船浪の音 |
| 主な特徴 | 閖上で受け継ぐ酒造り、名取の米や水を生かした地酒造り |
| 酒蔵見学 | 事前申込制 |
| 直営店 | 酒蔵内にあり |
| 購入方法 | 直営店、公式オンラインショップ、取扱店など |
国税庁の酒蔵マップでも、佐々木酒造店の主な銘柄として「宝船浪の音」が掲載されています。
佐々木酒造店と代表銘柄「宝船浪の音」
佐々木酒造店を代表する日本酒が、「宝船浪の音(ほうせんなみのおと)」です。
「浪の音」は、創業当時から使われてきた屋号に由来する名前です。その名を受け継ぐ「宝船浪の音」は、佐々木酒造店と閖上の土地とのつながりを伝える代表銘柄となっています。
現在は、純米酒や純米吟醸酒、純米大吟醸酒、本醸造酒など、酒質の異なる日本酒を展開しています。
創業時から受け継がれてきた「浪の音」の名は、現在も佐々木酒造店の中心となる銘柄として残されています。
閖上で始まり、震災を越えて戻ってきた酒蔵
1871年、港町・閖上で始まった酒造り
佐々木酒造店の創業は、1871年(明治4年)にさかのぼります。
初代・佐々木新助が、伊達藩の御用港として栄えた閖上で酒屋を始めたのがその始まりです。屋号を「浪の音」、酒の銘柄を「宝船浪の音」とし、この土地で酒造りを受け継いできました。
地元の米と名取川の伏流水を使い、南部杜氏を招いて酒を醸すなど、閖上の暮らしに根ざした地酒造りを続けてきました。
東日本大震災で失われた酒蔵
2011年3月11日の東日本大震災では、地震と津波によって創業時からの建物や酒蔵、製造設備などが大きな被害を受けました。蔵にあった酒や在庫の多くも失われ、酒造りを続けてきた環境は一変します。
そのなかで、奇跡的に流出を免れた2本の密閉タンクが残っていました。そこからくみ出した酒を瓶詰めし、震災から1年となる2012年3月11日に発売したのが「閖(ゆり)」です。
「閖」は、酒蔵のある閖上の地名にも使われている文字です。失われたものが多いなかで残った酒から生まれたこの銘柄は、その後も佐々木酒造店と閖上を結ぶ日本酒として受け継がれていきます。
仮設蔵でつないだ酒造り
震災後も佐々木酒造店は酒造りを途絶えさせず、2012年12月には名取市復興工業団地の仮設蔵で醸造を再開しました。
設備の一部は全国の酒蔵や関係者から寄せられた支援によって整えられた一方、原料や水も震災前と同じ条件ではありませんでした。それまで使用していた「蔵の華」の契約農家も被災したため、食用米の「ひとめぼれ」を使った酒造りに挑戦。さらに、新たな仕込み水を探しながら、限られた環境のなかで醸造を続けました。
こうした仮設蔵での試行錯誤は、新しい酒に取り組むきっかけにもなり、この時期の挑戦から「純米大吟醸 浪庵(ろあん)」や「純米吟醸 玲瓏(れいろう)」が生まれています。
2019年、再び閖上へ
仮設蔵での酒造りを続けながら、佐々木酒造店は創業地・閖上での再建を目指しました。
2017年から新しい酒蔵の計画を進め、2018年12月に地鎮祭を実施。2019年10月1日の「日本酒の日」に新しい蔵を開き、約7年にわたる仮設環境での酒造りを経て、本格的に閖上へ戻りました。
現在の酒蔵が建つのは、震災以前から佐々木酒造店が酒造りをしていた場所です。創業地を離れざるを得ない時期を経ながらも醸造を途絶えさせず、再び閖上へ戻った歩みは、現在の「宝船浪の音」へとつながっています。
名取の米と水、土地の文化を映す酒造り
佐々木酒造店が大切にしているのは、地域の原料を使うことだけではありません。
公式サイトでは、地酒を「その土地の文化を液状化したもの」と捉える考え方が示されており、米や水に加えて、地域の食や暮らし、人とのつながりまで含めて酒に表していく姿勢がうかがえます。
名取・宮城の米を生かす
佐々木酒造店では、宮城県産の「蔵の華」や「吟のいろは」、名取市産米などを使った日本酒を手がけています。
地域の米を大切にしながらも、すべての商品を地元米だけで造っているわけではありません。純米大吟醸などでは山田錦や雄町といった県外産の酒米も使われており、目指す酒質に合わせて原料米を選び分けています。
地元とのつながりを大切にしつつ、酒ごとの個性に合った米を使うことが、現在の佐々木酒造店の酒造りにつながっています。
名取の水とともに続く酒造り
水も、佐々木酒造店と名取の土地を結ぶ大切な要素です。
震災以前は名取川の伏流水を仕込み水として使っていましたが、東日本大震災後には以前と同じ条件で酒造りを続けることが難しくなり、新たな仕込み水を探す必要もありました。
現在の商品でも名取川の伏流水とのつながりが紹介されており、酒造りを支える水と土地との関係は今も受け継がれています。
南部杜氏から受け継ぐ技
佐々木酒造店では、長く南部杜氏を招いて酒造りを行ってきました。
岩手県を中心に受け継がれてきた南部杜氏の技術を取り入れながら、「宝船浪の音」を醸してきたことも、この酒蔵の歩みを支えてきた要素のひとつです。
名取や宮城の米、地域の水、受け継がれてきた酒造りの技を組み合わせながら、閖上の食や暮らしに寄り添う地酒を造り続けています。
佐々木酒造店の代表銘柄と主な日本酒
佐々木酒造店では、代表銘柄「宝船浪の音」のもと、純米酒から純米大吟醸酒まで幅広い日本酒を手がけています。
ここでは、そのなかから特徴の異なる3本を紹介します。
宝船浪の音 純米酒 閖(ゆり)
「宝船浪の音 純米酒 閖」は、東日本大震災後に生まれ、現在まで受け継がれている日本酒です。
現在の商品には名取市産の酒米「蔵の華」を使用し、精米歩合は60%。名取川の伏流水を仕込み水として醸され、軽やかな口当たりと、すっきりとした後味のキレを特徴としています。
商品には、名取の米や水、地場産品が「閖」とともに広がってほしいという思いも込められており、地域とのつながりを大切にする佐々木酒造店の酒造りが表れた一本です。
宝船浪の音 純米吟醸
「宝船浪の音 純米吟醸」は、宮城県産米を50%まで精米し、宮城A酵母を使って仕込まれています。
爽やかな香りに加え、ジューシーな味わいと後味のキレをあわせ持つ酒質が特徴です。
公式では、刺身やカルパッチョ、天ぷらなどとの組み合わせも紹介されており、食事とともに楽しめる純米吟醸として展開されています。
宝船浪の音 純米大吟醸 浪庵(ろあん)
「宝船浪の音 純米大吟醸 浪庵」は、仮設蔵時代に生まれ、現在まで受け継がれている純米大吟醸です。
原料米には兵庫県産山田錦を使用し、精米歩合は40%。宮城B酵母で醸され、みずみずしく華やかな香りと、口の中に広がる旨味、後味のキレを特徴としています。
「浪庵」という名には、さざ波のなかに佇む庵で浪の音を聞きながら酒を楽しむような心象風景が重ねられています。創業以来受け継がれてきた「浪の音」という言葉が、商品名にも息づいています。
酒蔵見学・直営店・購入方法
佐々木酒造店では、酒蔵見学を受け付けているほか、蔵内の直営店や公式オンラインショップから「宝船浪の音」を購入できます。
酒蔵見学は事前申込制
酒蔵見学は事前申込制で、繁忙期などを除いて実施されています。
見学では、佐々木酒造店の歴史や東日本大震災からの復興について説明を受けたあと、現在の酒蔵を案内してもらい、最後には試飲も楽しめます。
公式サイトでは、見学料金は1人1,100円(税込)、所要時間は約1時間と案内されています。ただし、仕込みの状況や時期によって見学できない場合もあるため、訪問前に公式サイトで最新情報を確認し、事前に申し込んでおくとよいでしょう。
震災以前から酒造りを行っていた閖上の地に再建された現在の蔵を実際に見られることも、佐々木酒造店の酒蔵見学の特徴です。
酒蔵内の直営店で購入できる
佐々木酒造店には直営店があり、「宝船浪の音」をはじめとする日本酒を現地で購入できます。
酒蔵見学後に立ち寄ることもでき、全国への発送にも対応しています。
営業時間や休業日は変更される場合があるため、直営店を目的に訪れる場合も、事前に公式サイトで営業状況を確認しておくとよいでしょう。
公式オンラインショップでも購入可能
佐々木酒造店の日本酒は、公式オンラインショップからも購入できます。
今回紹介した「宝船浪の音 純米酒 閖」「宝船浪の音 純米吟醸」「宝船浪の音 純米大吟醸 浪庵」も取り扱われています。
また、地域の酒販店や日本酒を扱う店舗でも販売されており、公式サイトには取扱店の案内も掲載されています。
まとめ|閖上とともに酒造りを続ける佐々木酒造店
佐々木酒造店の歩みをたどると、そこには一貫して閖上という土地とのつながりがあります。
東日本大震災で酒蔵を失ったあとも酒造りを途絶えさせず、仮設蔵での醸造を経て、2019年には再び創業の地へ戻りました。
現在の「宝船浪の音」には、長く受け継がれてきた酒造りとともに、「閖」や「浪庵」のように震災後の歩みから生まれた酒も加わっています。
名取の米や水、地域の食や暮らしと向き合いながら酒を醸す佐々木酒造店。その一本を味わうことで、閖上という土地とともに歩んできた時間にも、少し触れられるのではないでしょうか。




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