喜久盛酒造|北上へ戻った酒蔵が醸す「鬼剣舞」「タクシードライバー」を紹介

鬼剣舞の文字 岩手県の酒蔵

岩手県北上市にある喜久盛酒造株式会社は、代表銘柄「鬼剣舞」や、現在の看板銘柄「タクシードライバー」などを手がける酒蔵です。

1894年(明治27年)に藤村酒造店として創業し、北上の地域文化と結びついた日本酒を造り続けてきました。

2011年の東日本大震災で酒蔵が大きな被害を受けた後も醸造を途絶えさせず、花巻市の借り蔵で酒造りを継続。

2024年には北上市の本社敷地に新しい蔵が完成し、約10年ぶりに創業地での仕込みを再開しています。

現在は、岩手県産米を使った全量純米の酒造りに取り組んでいます。

この記事では、喜久盛酒造の基本情報や歴史、岩手県産米を生かした酒造り、代表銘柄「鬼剣舞」をはじめ、「タクシードライバー」「死後さばきにあう」の特徴、酒蔵見学や購入方法について紹介します。


喜久盛酒造株式会社は、岩手県北上市更木に蔵を構える日本酒の酒蔵です。

項目内容
酒蔵名喜久盛酒造株式会社
読み方きくざかりしゅぞう
所在地岩手県北上市更木3地割54番地
創業1894年(明治27年)
創業時の名称藤村酒造店
代表銘柄鬼剣舞
主な銘柄喜久盛、鬼剣舞、タクシードライバーなど
主な特徴岩手県産米を使った全量純米の酒造り
酒蔵見学一般向けの見学は行っていない
直売所常設直売所について公式な案内は確認できず
購入方法取扱店、日本酒専門店、通販サイトなど

国税庁の酒蔵マップでは、喜久盛酒造の主な銘柄として「鬼剣舞」が掲載されています。

現在は「タクシードライバー」も広く知られており、地域に根ざした銘柄から、独自の名称やデザインを取り入れた商品まで手がけています。


喜久盛酒造が手がける主な銘柄には、「喜久盛」「鬼剣舞」「タクシードライバー」などがあります。

国税庁の酒蔵マップに掲載されている代表銘柄は、「鬼剣舞(おにけんばい)」です。

その名は、北上市周辺に伝わる郷土芸能に由来しており、土地の文化と結びついた銘柄として受け継がれてきました。

一方、「タクシードライバー」は、現在の喜久盛酒造を象徴する看板銘柄です。

印象的な名称とラベルを取り入れながら、日本酒を手に取るきっかけとなる商品づくりへつなげています。

このほかにも、「死後さばきにあう」など、映画や音楽、東北の風景を思わせる名称やデザインを用いた日本酒を展開しています。

こうした表現の土台にあるのは、喜久盛酒造が受け継いできた純米酒づくりです。

北上の郷土文化を映す「鬼剣舞」と、五代目のもとで生まれた「タクシードライバー」は、それぞれ異なる時代の喜久盛酒造を伝える銘柄となっています。


喜久盛酒造の始まりは、1894年(明治27年)にさかのぼります。

北上市で藤村酒造店として創業し、地域に根ざした酒造りを続けてきました。

1951年には現在の喜久盛酒造株式会社となり、「喜久盛」や「鬼剣舞」などの銘柄を通して、北上の暮らしや文化とのつながりを深めていきます。

現在の五代目蔵元である藤村卓也氏は、もともとゲーム制作の仕事に携わっていました。

父親の病気をきっかけに北上へ戻り、2003年に酒蔵を継いでからは、純米酒を中心とする方向へ酒造りを転換していきます。

その歩みのなかで誕生したのが、2004年の「電氣菩薩」と、翌2005年に発売された「タクシードライバー」です。

映画や音楽、デザインなどを商品名やラベルへ取り入れた表現は、当時の日本酒としても印象的なものでした。

「タクシードライバー」の誕生を機に、現在の喜久盛酒造へつながる商品づくりが形づくられていきます。

大きな転機となったのは、2011年の東日本大震災です。

地震によって北上市の酒蔵は半壊し、それまで使っていた建物や設備の多くが被害を受けました。

それでも、残された設備を使いながら醸造を続け、酒造りを途絶えさせることはありませんでした。

その後、2014年からは花巻市にあった酒蔵を借りて仕込みを行うようになります。

酒造りは花巻市、瓶詰めや出荷は北上市という体制となり、二つの場所を行き来する日々が約10年にわたって続きました。

借り蔵へ移った時期には、醸造アルコールを加えた酒の製造を終え、造る日本酒を純米酒に統一しています。

震災後の厳しい状況のなかで、喜久盛酒造が進む方向をより明確にした節目でもありました。

そして2024年、創業130周年を迎えた年に、北上市の本社敷地へ新しい酒蔵が完成します。

これにより、約10年ぶりに創業地での仕込みが再開され、醸造から瓶詰めまでを一つの場所で行えるようになりました。

北上への帰還は、震災前の酒造りへそのまま戻ることではありません。

花巻市の借り蔵で重ねた経験を受け継ぎながら、新しい環境で次の歩みを始めるための節目となりました。


喜久盛酒造では、造る日本酒を純米酒に統一し、岩手県産米を生かした酒造りを続けています。

全量純米へ移行したのは、花巻市の借り蔵で仕込みを始めた2014年です。

それ以前から純米酒を中心とする方向へ歩みを進めていましたが、この時期を境に、醸造アルコールを加えた酒の製造を終えました。

原料米には、商品に応じて岩手県産米を使い分け、それぞれの米が持つ特徴を生かしながら仕込んでいます。

麹や酵母にも、岩手県で開発されたものが取り入れられています。

商品によっては、岩手県独自の酵母や麹菌を取り入れ、県産米と組み合わせた酒造りを行っています。

喜久盛酒造が大切にしているのは、米の旨味と酸を感じられる酒質です。

無濾過原酒を中心に、冷酒から燗まで幅広い温度帯で味わえ、食事にも寄り添う日本酒を手がけています。

酒を搾る工程では、花巻市の借り蔵で使っていた佐瀬式の圧搾機を、北上市の新しい蔵でも採用しました。

醪を袋に入れて槽へ積み、時間をかけて圧力を加える方法で、効率だけを見れば手間のかかる仕組みです。

それでも、借り蔵で形づくられた酒質を受け継ぐため、同じ搾り方が選ばれています。

2024年に完成した新蔵には温度管理のできる設備も整えられ、年間を通じた仕込みに対応できるようになりました。

岩手県産の原料と県独自の醸造素材を生かしながら、花巻市で積み重ねた経験を北上市へ持ち帰る。

そこに、現在の喜久盛酒造の酒造りが表れています。


喜久盛酒造では、北上市の郷土文化を映す「鬼剣舞」や、現在の看板銘柄「タクシードライバー」をはじめ、個性的な名称やラベルを取り入れた日本酒が造られています。

ここでは、地域とのつながり、酒造りの方向性、独自の商品表現をそれぞれ感じられる3本を紹介します。


喜久盛 純米吟醸生原酒「鬼剣舞」

「鬼剣舞」は、北上市周辺に伝わる郷土芸能の名を冠した、喜久盛酒造の代表銘柄です。

今回紹介する純米吟醸生原酒には、北上市立花地区で育てられた「亀の尾」を使用し、50%まで精米しています。

岩手県独自の酵母「ゆうこの想い」と麹菌「黎明平泉」を組み合わせ、地域の米と醸造技術を生かして仕込まれた一本です。

生原酒ならではの瑞々しさと、華やかな香りを感じられる日本酒に仕上げられています。

なお、生原酒のため要冷蔵となり、醸造年度によって数値や味わいが異なる場合があります。


タクシードライバー 純米原酒

「タクシードライバー」は、2005年に誕生した喜久盛酒造の看板銘柄です。

岩手県産米「かけはし」を使った純米原酒で、米の旨味と酸を備えながら、後口には軽やかなキレが感じられます。

冷酒から燗まで、温度による味わいの変化を楽しめることも特徴です。

食事と合わせながら、好みの温度帯を探してみるのもよいでしょう。

仕込みごとに使用する酵母や酒質が異なる場合があるため、購入時には商品ページやラベルに記載された醸造年度、仕込み番号を確認してください。


死後さばきにあう 純米生原酒

「死後さばきにあう」は、東北地方の道路沿いや民家の塀などで見かけることのある、通称「キリスト看板」を思わせる印象的なラベルの純米生原酒です。

一度見たら忘れにくい名前ですが、中身は岩手県産米を55%まで精米して仕込んだ純米酒。

生原酒らしい飲み応えがあり、米の旨味と酸、後口のキレを感じられます。

印象的なラベル表現と、全量純米蔵として積み重ねてきた酒造りが重なる、喜久盛酒造らしい一本です。


喜久盛酒造では、現在、一般向けの酒蔵見学は行っていません。

酒蔵に常設の直売所があるか、一般客が現地で商品を購入できるかについても、明確な公式案内は確認できませんでした。

現地での購入を希望する場合は、訪問前に喜久盛酒造へ問い合わせておくと安心です。

喜久盛酒造の日本酒は、日本酒専門店や各地の取扱店、通販サイトなどで購入できます。

今回紹介した「鬼剣舞 純米吟醸生原酒」「タクシードライバー 純米原酒」「死後さばきにあう 純米生原酒」も、取扱店のオンラインショップや楽天市場などで販売されています。

ただし、「鬼剣舞」と「死後さばきにあう」は生酒のため、販売時期や在庫状況が限られる場合があります。

「タクシードライバー」も、醸造年度や仕込み番号によって使用する酵母や酒質が異なることがあります。

購入時には、原料米や火入れの有無、保存方法、醸造年度などの商品情報を確認してください。


「鬼剣舞」「タクシードライバー」「死後さばきにあう」。

喜久盛酒造の日本酒には、それぞれ異なる名前と表情があります。

最初は印象的なラベルや銘柄名に目を引かれても、その一本をたどっていくと、北上の土地や岩手の米、そして酒造りをつないできた時間が見えてきます。

東日本大震災で蔵が被害を受けた後も、花巻市の借り蔵で仕込みを続け、やがて北上市の創業地へ戻った喜久盛酒造。

新しい蔵で始まった酒造りは、過去へ戻るためのものではなく、これまで積み重ねてきた経験を次へつなぐ歩みでもあります。

気になる銘柄を手に取ったときは、味わいだけでなく、その背景にある蔵の時間にも少し思いを重ねてみてはいかがでしょうか。

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